視力回復手術として注目を集めているのが『ICL手術』です。安全性も高く、コンタクトレンズやレーシックと比較して見えやすいと評判の手術法です。しかし、「レーシックでも高額なイメージなのに、ICL手術はもっと高いのでは?」と感じる方も多いと思います。
この記事を読めば、ICL手術の費用相場はいくらなのか、お得に手術を受けるための方法について知ることができます。結論から言うとICL手術はイメージ通り高額なのですが、支払い方法などを工夫すれば払いやすい環境を作ることができますよ。
ICLとは?
ICLとは、「眼にコンタクトレンズを挿入する視力回復手術(インプラント手術)」のことです。眼の表面に装着するコンタクトレンズとは違い、取り外す手間がないなど永久的に視力を安定させることができます。同じ視力回復手術のレーシックよりも見え方が鮮明という強みがあります。
眼にコンタクトレンズを挿入するということで心配・不安に感じる方も多いですが、世界で60万以上の症例実績があるなど安全性も高めです。安全性・有効性が日本でも認められており、2010年には厚生労働省に認可されています。
その一方で、レーシックよりも高額になるのがICLのデメリットとも言えるでしょう。詳しい費用やお得に手術を行う方法などは後述しますが、一括で支払うのが少し難しいというケースもあります。分割払いなどを活用し、無理のない支払いを選択するようにしましょう。
ICLの特徴
- 角膜を一切削らすにコンタクトレンズを挿入する視力回復手術
- 厚生労働省に認可されているなど安全性や有効性も認められている
- 取り外しやお手入れなどの手間が必要ない(永久的に挿入できる)
- 見え方の不満や、将来的な眼の病気が不安な方でもレンズは取り外せるため安心
- 全体的に費用が高めなのが数少ないデメリット
ICLの費用相場は両目で50万~70万円
まずは、ICLの費用相場について簡単に見ていきましょう。
実際は、片目・両目/乱視なし・乱視ありなど、その人の手術内容によって大きく異なります。そのため、ここでは「ICL(乱視なし)」と「ICL(乱視あり)」の最もオーソドックスな内容で解説していきます。
ICL(乱視なし) | 500,000円~600,000円 |
---|---|
ICL(乱視あり) | 600,000円~700,000円 |
ICL手術は、眼に挿入するコンタクトレンズの種類によって費用が異なります。
乱視が入っていない場合は50万円前後となっていますが、乱視が入っていると70万円近くなることもあります。ただ、クリニックによってはどちらも同額のケースもありますので、乱視ありの方はそういったクリニックを差額のがおすすめです。
片目だけ施術を受ける場合は、両目の半額になることが多いです。検査費用・お薬代・アフターケア代が別途請求になっている可能性もありますので、カウンセリング時にしっかりと内訳を確認しておきましょう。
ICLは保険適用されない自由診療
ICLは手術を行うため「健康保険が適用して3割負担」というイメージがあると思いますが、残念ながらICLは公的医療保険が適用されません。つまり、基本的には治療費が全額負担になる「自由診療」となります。医療機関が行う手術なので、意外と思った方も多いかもしれません。
実は、健康保険を適用させるには「日常生活を送るのが難しい症状に対する治療」というのが前提条件となるのです。分かりやすい例だと、風邪をひく、アレルギー症状が出る、骨折するなどです。日常生活を正常に行うためには、医療機関などで診てもらう必要がありますよね。
しかし、ICLは視力を回復する手術になります。視力を矯正するためにはメガネもありますし、コンタクトレンズという方法もあります。つまり、「日常生活を正常に行うためには不必要な手術」として扱われるのです。
医療費控除を利用すれば返金が受けられる
上記のように公的医療保険が適用されないICL手術ですが、「医療費控除」の対象にはなります。医療費控除とは、「その年の1月~12月までに請求された医療費が10万円を超える場合、税金の還付対象になる制度」のことです。手術費用自体は安くなりませんが、総合的な負担額は減るといった感じです。
ただし、医療費控除を受けるには別途自分で手続きする必要があります。健康保険証のように、提出して病院側が手続きするようなものではありません。少しだけ手続きの流れと、手続きを進める上で覚えておくべき注意点を簡単にまとめてみました。
医療費控除の流れ
医療費控除の申告を行う場合、個人で確定申告を行わなくてはいけません。会社が行う年末調整と混同してしまう方もいますので、ここで覚えておきましょう。確定申告を行う際には「ICL手術を行った際に発行された領収書」が必要になるため、発行されたら厳重に管理しておく必要があります。
それに加えて、確定申告書の作成には「源泉徴収票」も必要です。それらの書類を揃えた上で、確定申告書に「医療費控除の明細書」もしくは、医療保険者から交付されあ「医療費通知」を添付して進めていきます。このように、用意すべき書類が多いため事前に確認しておく必要があるのです。
医療費控除の手続きには、以下のものが必要になります。
- ICL手術を行った際に発行された領収書
- 源泉徴収票
- 医療費控除の明細書もしくは医療費通知
高額療養費制度の使用はできない
医療費の負担を抑える方法には、他に「高額療養費制度」と呼ばれるものがあります。名称の通り、高額医療費に対して適用される制度です。ICL手術は両目で50万円を超えるなど高額医療に含まれる可能性はありますが、残念ながら対象外となっています。
なぜなら、高額医療費制度は「医療保険の対象になった医療費のみが対象」という条件があるからです。つまり、ICL手術の治療費を抑えるためには医療費控除を利用するしかありません。担当医などからも説明があると思いますので、しっかりと聞いて準備を始めておきましょう。
クリニック12院の料金や保証期間を比較
続いて、ICL手術を行っている有名クリニック12院を以下4つの項目で比較してみました。自分に合ったクリニックを見つけられれば幸いです。
ICLの料金 (乱視なし) |
ICLの料金 (乱視あり) |
保証期間 | 術後検診 | |
---|---|---|---|---|
アイクリニック東京 | 730,000円 | 830,000円 | 3年間 | 翌日/1週間後/1ヶ月後/3ヶ月後/6ヶ月後/1年 |
品川近視クリニック | -5D未満:460,000円 -5D未満:537,000円 |
-5D未満:560,000円 -5D未満:637,000円 |
3年間 | 翌日/翌々日/1週間後/1ヶ月後/3ヶ月後/6ヶ月後/1年 |
ふくおか眼科クリニック | 693,000円 | 693,000円 | 3年間 | 翌日/1週間後/1ヶ月後/3ヶ月後/6ヶ月後 |
新宿近視クリニック | -5D未満:460,000円 -5D未満:537,000円 |
-5D未満:560,000円 -5D未満:637,000円 |
3年間 | 翌日/翌々日/1週間後/1ヶ月後/3ヶ月後/6ヶ月後/1年 |
先進会眼科 | 460,000円~ | 526,000円~ | 1年間 | 翌日~3ヶ月後 |
名古屋アイクリニック | 770,000円 | 825,000円 | 一生涯 | 翌日/3日後/1週間後/1ヶ月後/3ヶ月後/1年 |
フジモト眼科 | 600,000円 | 700,000円 | 要確認 | 翌日/3日後/1ヶ月後/3ヶ月後1年 |
眼科こがクリニック | 660,000円 | 720,000円 | 3年間 | 翌日/1週間後/1ヶ月後/3ヶ月後 |
おおしま眼科クリニック | 660,000円 | 770,000円 | 3年間 | 翌日/1週間後/1ヶ月後/3ヶ月後/6ヶ月後 |
アイケアクリニック | 600,000円 | 650,000円 | 要確認 | 要確認 |
よしだ眼科クリニック | -6.0Dまで:450,000円 -6.0D以上:594,000円 |
-6.0Dまで:530,000円 -6.0D以上:674,000円 |
3年間 | 翌日/1週間後/2週間後/1ヶ月後/3ヶ月後 |
南青山アイクリニック東京 | 730,000円 | 830,000円 | 要確認 | 翌日/1週間後/2週間後/1ヶ月後/3ヶ月後/6ヶ月後/1年 |
ICL手術の相場はこのようになっています。乱視ありの方が10万円前後高くなっており、一括で支払うのは少し難しい金額帯です。
定期検診も「すべて無料」「途中から有料」「最初から有料」などさまざまな料金形態を取っていますので、カウンセリングの時点で聞いておくようにしましょう。
保証内容はクリニックよっても異なりますが、眼の手術ということもありますので、保証期間は長ければ長いほど安心して手術をお願いすることができます。できれば3年間は欲しいところですが、心配な方は一生涯保証してくれるクリニックを選ぶと良いでしょう。
ただし、手術費用だけでクリニックを選ぶのはおすすめしません。もちろん自分の予算に合ったクリニックを選ぶことは重要ですが、担当する医師の実績やICLレンズの種類、保証内容・保証期間についても確認してみましょう。
「レーシック・ICLのおすすめクリニック11選|手術内容や病院の選び方も解説」でおすすめのクリニックを紹介していますので、気になった方は参考にしてみてください。
ICLの費用面でトラブルにならないためのポイント
ここからは、ICLの費用面で考えられるトラブルと、事前に防ぐためのポイントを解説していきます。費用面は最もトラブルになりやすい項目ですので、できるだけ実践できるようにしておきましょう。
①:カウンセリングで総額の費用を教えてもらう
まずは、カウンセリングの時点で「総額いくらいになるのか?」という点を聞いておきましょう。知らない追加費用が請求されると、必ずトラブルになるからです。クリニックや手術内容によっても異なりますが、ICL手術で請求される費用は以下のようなものがあります。
ICL手術で発生する費用
相場 | 内容 | |
---|---|---|
検査費用 | 10,000~30,000円 | ICL手術を受けるためには、手術前に多くの検査を受ける必要があります。度数を合わせるだけでなく、安全に手術を進めるためにも必要なものです。視力検査・角膜の厚さや形状、眼内の詳細について調べられます。 |
手術室の使用料 | 500,000~700,000円 | 手術を行う施設利用料です。高度な設備を扱うため請求されます。 |
医師の技術料 | 手術を担当する眼科医に対する費用です。技術と経験が求められる手術のため、実績が多ければ多いほど高い傾向にあります。 | |
レンズ料金 | 挿入するICLレンズの費用です。高品質なレンズであればあるほど高くなります。 | |
手術中の消耗品 | 手術中に使用される器具や消耗品、薬品に対する費用です。 | |
薬剤費用 | 5,000~10,000円 | 感染症を防ぐための「抗生物質点眼薬」と、炎症をおさえるための「ステロイド点眼薬」が処方されます。人によって数週間~数ヶ月必要になりますので、費用も多少前後します。 |
定期検診 | 5,000~10,000円/回 | 手術終了後、眼の状態を確認するために定期検診に通う必要があります。回数はクリニックよって異なりますが、5~6回前後が多いです。 |
大まかな請求内容としては、表のようになっています。クリニックよっては他の費用が発生することもありますので、総額を聞くだけでなく内訳も教えてもらうようにしましょう。それらすべてを確認した上で、ICL手術をお願いするのか、それとも止めるのか検討するのがおすすめです。
そして、支払いタイミングについても確認しておかなくてはいけません。前受け金のように、費用の半分前後を先払いで請求されることがあるからです。
手術後に支払うものだと思っていたら前受け金があり、手持ちが足りない…というケースになりかねませんので、事前に受け金の有無も確認しておくと安心できるかと思います。
②:事前の検査費用が有料か聞いておく
ICL手術前には、いくつかの重要な検査が必要です。これらの検査は、患者さんの目の状態を詳細に把握し、安全かつ効果的な手術を行うために不可欠です。検査費用には、視力検査、角膜の形状と厚さの測定、眼内の詳細な検査などが含まれます。
これらの検査は、手術適応を確認するために行われ、結果に基づいて適したレンズを選定します。費用はクリニックによって異なりますが、一般的には1万円から3万円程度が目安です。検査費用は手術の成功に直結する重要なステップですので、正確な情報を提供し、安心して手術に臨むための準備となります。
③:手術日の交通費が支給されるか聞いておく
ICL手術自体は当日に終わります。手術自体も両目で10~15分ほどですし、支払いなどが終わればそのまま帰宅という形です。しかし、手術当日は視界がぼやけたり、異物感や違和感を感じて歩行が困難になるケースも十分ぶ考えられます。
付き添いの方があれば安心ですが、難しい場合はタクシーなどの利用も検討しましょう。クリニックによっては交通費が支給されることもありますし、中には近くのホテルを手配してくれるクリニックもあるほどです。こういった細かい部分の保障も調べておくと、気持ちよく依頼することができます。
④:カウンセリングは丁寧で術後リスクも教えてくれたか
クリニックを選ぶ際には、さまざまなポイントで比較しなくてはいけません。費用のことはもちろんのこと、クリニック・医師の実績、アフターケアの充実度、近くにあるかどうかなど、自分が優先すべきポイントを考えて選ぶ必要があります。
その中でも個人的に注目したいのが「カウンセリングの質」についてです。カウンセリングとは、どのような手術を行うのか、費用はどのくらいかかるのか、不安なことや分からないことに対する質疑応答など、手術前に行われる説明のようなものです。
カウンセリングで注目するポイント
- 丁寧な口調で細かい部分まで説明してくれたか
- 費用に関して検査費や術後検診費などすべて伝えてくれたか
- 手術後にどんなリスクや副作用があるか教えてくれたか
- 強引な勧誘や契約をしてこなかったか
こういった当然のことができるクリニックが良いクリニックです。とくにリスク面や副作用に関して隠すクリニックもありますので、必ずここの部分を事前に説明してくれるクリニックにしましょう。
ICLの費用についてよくある質問
最後に、ICLの費用に関してよく挙げられる質問をQ&Aという形で解説していきます。
Q.病院で提示された金額以外にも費用はかかる?
基本的には、すべての料金を含めた内容で提示してくれます。ただし、クリニックによっては手術費用と他の費用を分けているケースもあります。
・検査費用
検査は基本的に2回行いますが、検査内容によって費用が変わるため提示される費用に含まれていないケースがあります。
・定期検診費用
手術後に眼の状態を確認するために、定期検診を受けなくてはいけません。手術後に発生するものですので、定期検診後に請求されることがほとんどです。中には定期検診費用が無料のクリニックもあります。
・アフターケア費用
眼に違和感を感じたいり、コンタクトレンズの種類を変更したい際に発生する費用です。保証期間内であれば無料のケースもありますが、有料の場合は手術後に改めて請求されます。
Q.医療ローンで分割払いはできる?
ICL手術は高額になりやすいため、現金一括払いが難しい方もいると思います。クレジットカードなどを所持していない場合、分割払いでお願いするとなると「医療ローン(メディカルローン)」を利用することになります。医療ローンとは、その名の通り医療行為に対応したローン制度のことです。
クレジットカードと比較して金利が安いのが特徴です。クレジットカードが年15~18%程度なのに対し、医療ローンは3~15%程度となっています。このように、クレジットカードよりもメリットはあるものの医療ローンには2つの注意点があります。
1つ目が「医療ローンを用意していないクリニックがある」という点です。これではそもそも医療ローンを検討することもできません。2つ目が「使用できるかは審査の結果次第」という点です。もし返済能力がないと判定された場合、医療ローンを利用できない可能性が高いです。
Q.コンタクトよりICLを受けた方がお得?
ICLは両目で50~70万円ほどが相場です。その一方で、コンタクトレンズは1ヶ月あたり約4,000円ほどの費用がかかります(※ソフトの場合)。1年使えば48,000円、10年使えば480,000円ほどになります。つまり、10年以上コンタクトレンズを使うのであれば、ICLの方がお得になる可能性が高いです。
逆に、「コンタクトレンズは使うけど普段はメガネで生活している方」にとってはコンタクトレンズの方がお得な可能性があります。コンタクトレンズの種類によって使用期限に差はありますが、仮に6ヶ月に1箱しか消費しない方であれば1年で8,000円ほどで済みます。10年で80,000円ほどにしかなりませんので、自分の環境に合わせてお得な方を選ぶと良いでしょう。
コンタクトレンズがおすすめな方
- 普段はメガネで生活している方(外出時のみコンタクトレンズなど)
- ハードコンタクトを選択する方
ICLがおすすめな方
- 10年以上コンタクトを使用する方
- 取り外しが面倒な方
- 購入する手間を省きたい方
Q.医療費控除はどれくらい還付がある?
還付金に関しては、細かい計算をすることで算出することができます。まずは、医療費控除額を算出してみましょう。医療費控除の計算式は、以下のようになります。
その年に支払った医療費がICL手術55万円だったと想定し、計算してみると550,000円―100,000円で450,000円が医療費控除額になります。控除額に指定の税率を掛けることで、減額される税率を算出することが可能です。指定の税率は「所得税」と「住民税」になります。
所得税と住民税はその人の給与によって大きく異なります。課税される所得金額を算出するには「所得控除後の金額」と「所得控除額の合計金額」が必要になり、計算もややこしくなるためここでは割愛します。仮に所得税率が10%であれば、約10万円前後の還付金があると覚えておきましょう。